quentin_01 クエンティン・サージャックの演奏に触れたとき、”光” を感じるのは、私だけではないでしょう。会場を埋め尽くしたオーディエンスの多くの方も感じたと思います。きらめく光、ゆらめく光、またたく光、熾火(おきび) のようなあたたかい光と、それはさまざまな光に変化します。その光を見つめていると、情感豊かなストーリーが見えてきます。その物語とそこに潜む感情は、実はクエンティンのものではなく、聴いている私たち自身の心の奥深くに潜む記憶と感情が投影されたものであることに気づき、ハッと驚くと同時に、今まで感じたことのない既視感が訪れました。

quentin_02 まるで夢の中で光につつまれたようなクエンティンの演奏は、2回のアンコールを含め2時間におよびました。胸がざわつく次の瞬間には安堵感につつまれる。交互に訪れる情感により、現実を離れ、心が奥深くまで奪われてしまったように感じた方も多かったことでしょう。センスよく多用されるサステイン・ペダル、きらめくように優美に展開されるアルペジオ、ジャストのタイミングより少しだけ遅れて繰り出されるメロディ、静寂さえもひとつの音になる etc. クエンティンの表現のエレメントひとつひとつにも深く魅了されました。幼いころから慣れ親しんだクラシック、思春期に出会ったジャズ、その後に出会った現代音楽と、彼が身につけてきたものすべてが高い次元で融合し昇華された表現が唯一無二となった彼のスタイルを形作っているのでしょう。

quentin_03 ほとんどが彼の3枚のアルバムからの曲で構成されていましたが、クエンティンは彼の親友 Chris Hooson が主導するユニット “Dakota Suite” にも参加していて、その新曲も披露してくれました。現在、この新曲を含む新しいアルバムをレコーディング中とのこと。今年 (2014年) 夏には、この ”Dakota Suite” の新譜も、SCHOLE レーベルからリリースが予定されていて、とても楽しみです。

quentin_04 この公演のために用意されたクエンティンのポートレイト写真を見たとき、実は神経質そうな人物を予想していました。その予想は見事に外れ、とても親しみやすくあたたかい気遣いにあふれた人柄に惹かれました。それは、曲間のオーディエンスへの語りかけの姿勢と言葉にも深く表れていました。クエンティンは、日本のことが大好きで、彼が敬愛するドビュッシーが葛飾北斎の作風に深く影響を受けたことを例に挙げ、フランス人と日本人の感覚と価値観には共有するものが多いことを強調していました。余談ですが、福岡が今回のツアーの初演で、クエンティンは前日にパリから到着しました。公演当日の朝、クエンティンはひとりで、マッサージ店でマッサージしてもらい、美容室でヘアカットしてもらい、ステージで着たハリス・ツイードのジャケットはホテルの近くの古着屋で購入と、初日から、とても楽しんでいました。近い将来、きっとまた日本を訪れてくれることでしょう。

quentin_05 今回の公演は、papparayray – パッパライライでの初めてのピアノ・コンサートでした。オーナーの方が、ソロ・ピアノの音楽が大好きで、クエンティンのピアノも特に気に入り、この3ヶ月間は、いつもクエンティンのピアノが店内に流れていました。この空間でのピアノの響きは、期待以上のもので、音の吸収と残響のバランスが自然で、素晴らしいものでした。papparayrayでのコンサートでは、毎回特別なドリンクをご用意いただくのですが、今回も、レモン、グレープフルーツ、ミカン、レモングラス、ローリエが入った白のサングリア、そしてイチゴ、リンゴ、黒胡椒、カルダモンが入った赤のサングリアの2種類が用意され、クエンティンのコンサートを、よりスペシャルに演出していました。コンサートは、音楽そのものが素晴らしいことはもちろんですが、季節感、空気感、環境、提供されるもの、会場へのトリップ、そして人との出会いを含め、すべての経験が交じりあって、深く記憶に残るものになります。

quentin_06 ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。

いつまでも記憶に残り続ける本公演の実現にあたり、SCHOLE INC. の皆様に深く感謝いたします。サポートいただいた bar buenos aires の皆様、ウェブ・マガジン dacapo の皆様、papparayray スタッフの皆様、そしてお手伝いいただいた関係者の皆様へ、心から感謝いたします。

そして素晴らしい演奏と心奪われる夢の時間を届けてくれた Quentin Sirjacq へ、最大の賛辞と心からの謝意をおくります。近い将来再び福岡で出会えることを願って。

The greatest praise and the sincere thankfulness to Quentin Sirjacq.

Special thanks to :
Akira Kosemura and Shin Kikuchi – SCHOLE INC.,  Hiroshi Yoshimoto – bar buenos aires,
Mika Nakasho – dacapo,  Seigo Ejima – Jabara Club,  Masayuki Ochi – Ochi Piano Tuning Laboratory,
Rie Yamanishi and all papparayray staff,  Yoshie Umeda – Hifumiyo Cafe,  Kaori and Tsuguto Kawazu – afterglow & Republik:

《Photo by Masayoshi Kawasaki – Republik: and Rie Yamanishi – papparayray》
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クエンティン・サージャック・ジャパンツアー・2014 福岡公演
公演日 : 2014年 2月 21日 (金)
出演 : Quentin Sirjacq
会場 : papparayray
主催 : Republik:
協力 : SCHOLE INC.,  papparayray,  越智ピアノ調律技術研究所

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quentin_610W Quentin Sirjacq  クエンティン・サージャック
フランス人作曲家・ピアニスト。
ハーグ王立音楽院及び、カリフォルニア州オークランド・ミルズ大学にて作曲と即興演奏を習得。デビュー作「La Chambre Claire」の発表以降、ソロでの活動のほか、Chris Hooson (Dakota suite)をはじめ、アメリカ、オランダ、ベルギー、ドイツ、スペイン、イタリア、イギリス、フランスなど多くの国のアーティストとコラボレーションを行っている。 また、テレビや映画、ドキュメンタリーの音楽も多数手掛け、今年に入ってからは、フランスのラジオで放送された、ゴンクール賞を受賞し世界的ベストセラーを記録したマルグリット・デュラスの小説「愛人 / ラマン」の背景音楽を手掛けたほか、フランス映画「Bright Days Ahead(Les Beaux Jours)」のサウンドトラックを手掛けている。 日本国内では、2011年にソロデビュー作となる「La Chambre Claire」の国内盤を発表。翌年には初の単独来日公演も行い、東京滞在中に録音したセカンドアルバム「Piano Memories」をSCHOLEよりリリース。

Quentin Sirjacq インタビュー は、こちら
(dacapo, Interviewer : Yuki Yamamoto – bar buenos aires)

Quentin Sirjacq オフィシャルサイト : http://www.quentinsirjacq.com/

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piano_memoriesPIANO MEMORIES”  (2014年1月24日発売, SCH-033)


Track List
memory 1
memory 2
memory 3
memory 4
memory 5
memory 6
memory 7
memory 8
memory 9
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Bright Days Ahead BRIGHT DAYS AHEAD”  (Soundtrack, 2013/08, SCH-031)


Track List
01. Bright days ahead closing
02. Airport
03. Hotel
04. Seesaw
05. Beachfront
06. Bright days ahead opening
07. Hide-and-seek
08. Going to Julien
09. Staircase
10. Into the lift
11. Soliloquy
12. Run away
13. With the wind
14. Caroline
15. The jetty
16. Swimming and laughing (bonus track)
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La Chambre ClaireLa Chambre Claire” (2011/11, SCH-020)
Track List
01.Car je cherche le vide
02.Et le Noir
03.Et le nu
04.Mais les ténèbres sont elles-mêmes
05.Des Toiles Où Vivent
06.Jaillissant de mon oeil
07.Par milliers
08.Des êtres disparus
09.Aux regards familiers.
10.Obsession
11.Récit d’un désespoir banal*
12.Obsession II*
* bonus track