church_01_610w 福岡での音楽イベントの会場選びはいつも悩みの種。ましてや、ピアノを置いている会場となるとなかなか思いつきません。ふつうのライブハウスはちょっと違うし、カフェなりバーなり、そのお店の方が私たちが届けたい音楽を本当に気に入ってくださるところは、なかなかありません。みなさんの街ではどうですか?

そんな中、福岡でピアニストとして活動してらっしゃるMさんからご紹介いただいたのが、日本福音ルーテル博多教会でした。初めて足を踏み入れた瞬間、ため息がもれました。天井、梁、上部がアーチ状になった窓枠、ベンチと床など木造の経年感やガラスのつり下げ照明と壁のライトの形状により、なんともいえない安らかな空間になっています。1948年築。外装は一度リノベーションしていますが、内部は建築当時のままです。

こんな空間に身をおくことは、福岡では本当にめずらしいことです。多くの土地開発によって新しいものに建て替わり、福岡には古い建造物、特に古い洋館はほとんど残っていません。新しいものが好きな県民性なのでしょうか?

この日本福音ルーテル博多教会の設計者は、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ (1980-1964) です。アメリカ、カンザス州に生まれ、英語教師として来日したヴォーリズは、京都で建築設計事務所を設立し日本各地で教会を中心に西洋建築の設計を数多く手がけました。この日本福音ルーテル博多教会で、私自身つたないピアノを弾いてみたのですが、空間がもつ音響はすばらしいものでした。ヴォーリズ自身、賛美歌を数多く作曲し、ハモンド・オルガンを初めて日本に紹介するなど、音楽にも造詣が深かったことが彼の設計にも思いが込められているでしょう。ヴォーリズは多才な方だったようで、メンソレータムで知られる近江兄弟社を設立し、日本に帰化してからは華族の方と結婚。そして終戦直後は、マッカーサーと近衛文麿との仲介に尽力した人物です。

church_02_610w church_03_610w church_04_610w この空間の中で、ひときわ存在感をはなっているのがパイプ・オルガン。フランスの名工、ガルニエ・オルガン工房によって、1972年に制作されたものです。この教会を初めて訪れたとき、幸運にもガルニエさんの息子さんがメンテナンス中でした。この息子さんは、東京に暮らし、サントリーホールをはじめ日本各地のガルニエ製パイプオルガンをメンテナンスしてらっしゃるそうです。実際の音ですが、笛のように空気が吹き込まれる音、空気の振動が伝わってきてやわらかな中にも躍動感あふれるものです。どなたでも参列できる日曜礼拝は午前10時半から。ここで賛美歌に伴奏されるパイプオルガンを聴くことができます。ところで、このオルガンの黒鍵の背の白い部分にはドイツ、ライン河の川底から取れた1万年前の樫の木の化石でできているとのこと。この教会には、まだまだいろんなストーリーが潜んでいそうです。ちなみにピアノは、KAWAIのセミコンサート・グランドです。

church_06_610w church_07_610w church_08_610w church_05_610w この会場での次回公演予定 :
2016年 6月 18日 (土)  haruka nakamura PIANO ENSEMBLE TOUR「音楽のある風景」ACT.11 福岡公演

 

 

 

日本福音ルーテル博多教会
福岡市博多区須崎町 3-9
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